2017年4月12日水曜日

骨折7週目(43~46日目)


4月9日(日) ギプスの臭い?

2時間近くのウォーキングに出かけた。
この前歩いた時はまだ凍っている場所もあって、こわごわだったな。
雪解け水がいっぱいだった所も水が引いてきて歩くのはとても楽になり、気温も最高。
カエルの合唱が、あちこちから聞こえてくる。

友人が夕食に訪れたので、ケーキも焼く。
左手は本当にほぼ普通に使えるようになり、注意しなくてはならないのはギプスを汚さない、濡らさないということだけ。

骨折経験者のブログなどを読むと、ギプスがとんでもない臭い(足の臭いを通り越して納豆の臭いとか・・・!)になったり、中が痒くてたまらなくなったりすることが多いようだ。

怪我したばかりの時にそういう記事を目にしたので、日が経つにつれ人に会えなくなってしまうかもと恐れていた。
何より、どうしてもそこから逃げられない自分が一番辛そうで、精神崩壊の危機を迎えるのでは・・・とひそかに心配だった。

ところが、一体どんな臭いが漂ってくるのかと時々鼻を近づけてクンクンとチェックしてきたものの、別に臭くはならなかった。
痒みを感じたこともない。汗をかく季節でなくてラッキーだったということだ。
寒い時期でもうっかり濡らしてしまうと、ギプス内で細菌が繁殖して臭くなったり痒くなったりすることもあるのかもしれない。


4月10日(月) ギプス最後の日

いよいよギプス最後の日になるだろうか。
そう思うと、ずっと守ってくれたギプスが何だか愛おしくなる。

今日はせっせとギプスの両端付近だけ、届く範囲で肌をきれいにした。
以前にも書いたが、綿棒や使わなくなった菜箸&化粧用コットンを利用すれば、結構奥のほうまで届く。
手全体は、ほとんどこれで届いた。
届かない手首周りは、きっとだらけなのだろうな・・・外すと一体どんな状態になっているのか、想像できない。

ギプスのままピアノとヴァイオリンを弾いている所を、また録画した。
完璧な演奏には全くほど遠いけれど、骨折した記念に♪

オーケストラのファーストヴァイオリン全員と、セカンドの中でも親しい人たち、それに指揮者までが、温かいメッセージを寄せ書きしてくれ、団員の1人が郵送してくれた。
大感激!早く良くなって、みんなとまた演奏したい。




4月11日(火) バイバイ、ギプス。こんにちは、スプリント!

いよいよギプスの取れる日!
3週間がっちりと守ってくれたギプスにお礼を言う。お世話になりました・・・

入り口の繊維部分はどんなに気を付けても薄汚れてきてしまったが、本体部分はしみひとつないきれいさをキープできた。
汁が飛び散りそうな食事の時はギプスの上にタオルをかぶせたりして、それなりに気をつかってきたからだ。

今日は、女性アシスタントがギプスを外してくれる。
ギプスカッターももう3度目なので、恐ろし気な音にも慣れっこだ。
とうとう最後まで臭くはならなかったが、中から何が出てくるのかドキドキ・・・
手は、3週間前にギプス交換した時のホルマリン漬けみたいな印象ではなく、生きている普通の手に戻っていてほっとする。

濡らしたコットンでマメに拭いていたので、手全体も肘近くもきれいなものだった。
でも、届かなかった手首の周りには、やはり白っぽく角質(垢)がこびりついていた。
白いので、そんなに不潔な印象ではないけれど。

それより、手首周辺だけ何だか毛深くなっていてびっくり!
右手の同じ場所(別に剃ったりしていないけれど)は、全然目立たないぞ。

光が当たらなくてもやしになっていそうなものだが、闇の中で元気に黒々と育っていた。
それに毛穴が目立って、やたらとポツポツしている。毛穴の数が増えた気もする。
なんじゃこれは!?

明らかに細くなっていて驚いたこの前と違い、腕そのものはそれほどひ弱な感じには見えなくなっていた。ダンベル効果か!?

すぐに洗わせてくれたので、持って行ったボディスクラブで何度もごしごし。
1人だったため、心置きなく洗うことができた。気持ちいい♪
モイスチャークリームも、たっぷり塗っておいた。
こんなことなら、シェーバーも持ってくるんだった・・・

それからレントゲンを撮る。手の甲を上にして1枚、斜めに置いて1枚、最後は空手チョップのように置いてねと言われた。
「空手チョップ」という言葉、知っているんだ・・・!

ドクターには、とても良い経過だと言われる。
レントゲン写真を見せてくれ、骨折箇所がちゃんとくっついていることを確認。

でも、これで終わりではなかった。
こういう骨折をした人には普通8週間ギプスをしてもらうが、関節もそれだけよけいに固まってしまうので、妥協策として取り外しのきくスプリント splint をあと2週間つけるようにとの指示。

骨はついているが、まだ完全にではないので注意が必要だそう。
本格的なリハビリは、2週間後に始めるそうだ。
それまでは自分で、痛みを感じない程度に適当に動かしてくださいって。。。
結構アバウトだ。

この前のレントゲン所見に記載されていた、有鈎骨がなんちゃらかんちゃらのことを突っ込んだら、「あれは僕が書いたわけではないから」と逃げられた。
「見方によって、そんな風に見えることもあるかもしれない」と、こちらもアバウト。
いいのか・・・?

ヴァイオリンはお許しが出たが、ダンベルは?と聞いたら、"Slow down!" と笑われた。
すでに使っていたことは、内緒にしておこう。

ランチタイムに突入してしまったらしく、1時まで待つように言われロビーに戻る。
セラピー側の入り口で待っていたら、偶然オーケストラのオーボエ奏者兼ライブラリアンが入ってきた。
怪我のことについてなど、あれこれおしゃべりする。
前にメールでも教えてくれたけど、ここのスタッフは皆さん素晴らしいそう。

しばらく待つと、作業療法士 occupational therapist さんが呼びにきてくれる。
人懐っこい笑顔でめちゃめちゃ感じがいい人で、一目惚れした。
セラピーでは体を触られるわけだから、苦手なタイプだったら蹴とばしたくなるかもしれない。

彼が1枚のプラスチックシートを熱湯で加工して、私の腕と手のサイズに合ったスプリントを作ってくれた。
マジックテープ Velcro で取り外しができる。
これも好きな色を選ぶように言われた。無難なグレーを選ぶ。

割と新しいテクニックらしいが、これを扱うようになってから、この年になって図工 art&craft の技が必要になったと笑っていた。
熱を利用して形作るタイプなので、thermoplastic splint (熱可塑性スプリント)と呼ばれるそうだ。


迷路のような造りの病棟で迷子になるといけないので、またロビーまでお見送りしてくれる。優しい
セラピーの予約も一緒にしてくれ、受付の人が私の名前をどう発音するのか聞いた時、"She's not Norwegian. (ノルウェー人ではないからね。)" とふざけていた。
手首だけでなく心も癒してくれそうなタイプで、2週間後にまた会うのが楽しみだ。

その新しいスプリントをつけたまま買い物。
運転の時はちょっと食い込む感じで痛かった。家に着いてからさっさと外してしまう。
これでは、何だかロボットになった気分だ。


久しぶりに身軽な私の姿を見て、夫も嬉しそうだった。
彼には本当にお世話になった。
色々な面でしっかりサポートしてくれ、どんなに助かったことか。
骨折してすぐに誓った「イライラしても夫に八つ当たりしない」をちゃんと守れたのは、私が好きなようにやらせてくれた彼のおかげでもある。

両手をしっかり洗ったり、両手で食器洗いしたり、両手で台布巾や雑巾を思い切り絞ったり、後ろで髪を束ねたり、両手にお湯を受けて顔を洗ったり、両手でクリームなどを顔に塗ったり、普通にシャワーを浴びたり、一番奥の歯まで楽にデンタルフロスしたり、久しぶりにできることを大いに楽しんでいる。

お帰りなさい、私の左手!
左手の分までとても頑張ってくれた右手も、ありがとう!

ネイルアートが似合うようなスラリと細長い美しい指ではないが、自分の体の一部を、これほど愛おしいと思ったことはない。
今までそんなことをしたことはない気がするけれど、思わず頬ずりしてしまった。

満月がきれいだ。
宇宙の営みに比べたら、ギプスを装着していた6週間なんて、まばたきの一瞬にも満たないな。
それでも、怪我のおかげで私の人生観はちょっぴり変化した。


4月12日(水) 庭仕事開始

朝、手がこわばることもなく快調。
でも、ブラを普通に後ろでつけるのはまだ無理だったので、相変わらず骨折当日に考案した方法で。
外すほうがずっと簡単で、ギプス装着中からこれはできていた。
久しぶりに普通の服が着られて嬉しい。

午前中、ピアノをガンガン弾いた。
バッハの「平均律」の最初の曲から、ちょっと指慣らし。やはりギプスをしていた時よりずっとなめらかに弾ける。

ベートーヴェンの「月光ソナタ」の第3楽章、「悲愴」の第1楽章、ショパンの「別れの曲」、「スケルツォ第2番」「幻想即興曲」、リストの「ラ・カンパネラ」、ドビュッシーの「月の光」、「沈める寺」、ラヴェルの「ピアノ協奏曲ト短調」第2楽章・・・

今日は全部通してではなく、ルンルン気分でところどころつまみ食い♪
オクターブがちゃんと弾けて本当にほっとするが、「沈める寺」の中間部の16分音符で動くところはきつかった。9度もまだ指が届かない。

ヴァイオリンは、今まで小指が全然使えなかったため、まだまだぎこちない。
手首がコチコチで、駒に近いほうまで指が届くようになるまでには、相当時間がかかりそうだ。
でもサードポジションは問題なさそうで、スズキの第4巻のヴィヴァルディなどは大丈夫。

第7巻のバッハのコンチェルトの第2楽章なども弾いてみた。E線の高いGが無理だ。
第9巻のモーツァルトも、高いAが出てくるところで撃沈。
「タイスの瞑想曲」!?これじゃとても瞑想なんかしていられないよ(汗;)
「G線上のアリア」なんて、2番目の音で既に退散で笑ってしまう。
まああせらず少しずつやってみよう。想像していたよりは弾けたので、今日のところは満足だ。

午後、デイリリーの古い葉をやっと片付ける。
久しぶりの庭仕事は、作業用手袋を両手にはめる儀式も神聖な表情で・・・
もうデイリリーの芽が出てきてしまっているので、踏まないように神経を使う。

左手で枯れ葉を持って右手で切る動作など、しばらくできなかったごく当たり前のことに新鮮な感動を覚える。
ついでに階段周りの落ち葉かき(雪が解けて、去年の秋に落ちていた葉が顔を見せた)もして、ずい分すっきりした。
ほうきはギプスの時から使っていたので、くま手 rake もためらいなく使い、別に痛みも感じなかった。

夕食の支度をする時も、肉や野菜を左手でがしっと押さえて切ることができるのが、何て楽ちんなのだろう。
結局今日は、セラピストさんが一生懸命作ってくれたスプリントをほとんど使わず仕舞いのうちに終わる。
反省・・・