2017年3月4日土曜日

骨折1週目 (3~7日目)


2月28日(火) ピアノが弾けた♪

が伸びていることに気付き、気になってまず左手の指の爪を切る。
さて、右手はどうしよう・・・?
夫に頼めばやってくれるだろうが、なるべく頼らず工夫したい。

爪やすりでこすってみたけれど、形を整えるのが難しい。
マウスパッド(滑り止め用)の上に爪切りを置き、右手の爪を挟んだ所で、シーネに守られた左腕の固い部分を利用して何とか切ることに成功!

午後はリラックスすることに決めた。
ピアノ音楽を聴きながら、ベッドに寝そべって読書。

うちのネコのキキは、夫か私の調子が悪い時には必ずなぐさめに来てくれる優しい子だ。
ゴロゴロ喉を鳴らすネコを抱っこしながら読書だなんて、まさに天国のような体験。
何もしていないのにいつもより疲れるのは、体全体フル稼働で故障箇所を直そうとしているせい?

のんびりすることに罪の意識を感じる必要はないはず。
すっかり元気になっても、たまにはこんな時間を持とう。

左手の指が紫色になっていることに、ふと気付く。
包帯がきつすぎて血行障害になってしまっているのでは・・・と心配になる。
壊死して切断なんてことになったりして。。。不安の雲がむくむくと育ち始めてしまう。
指は冷たくなってはいないので大丈夫だろうが、包帯をゆるめてみた。
だいぶ楽になった気がする。

気を取り直して、ピアノを弾いてみることにした。
大好きなショパンの「別れの曲」の初めのほうは、左手がほとんど単音なので、ギプスから少し出ている左手の指1本でも弾けることがわかってにんまり。

ふにゃふにゃで力が入らなかったり、逆に無神経で乱暴な音しか出せなかったらがっかりだが、ペダルのおかげで一応レガートに聞こえる。
神経がずたずたに破壊されて、強弱の調節が全くできない・・・という状況ではなさそうで、一応ほっとする。


3月1日(水) 骨折時の心構え

今日は歯医者の予約があったので、キャンセルはせず夫に連れて行ってもらった。
受付にいたアシスタントのお姉さんが、私のギプス姿に驚く。
2月19日にあったコンサートに来てくれていたそうで、当分ヴァイオリンが弾けなくなっちゃいますね・・・と気の毒がってくれた。

骨折した当初はこぶしを握るなんてまったく不可能だったけれど、包帯をさらにゆるめると、それがまたできるようになった。
夫から禁止令が出ていたが、彼の留守中にこっそり皿洗いもしてみる。
ほとんど右手しか使えないので時間はかかっても、何とかできることがわかった。

台布巾を絞るのは絶対無理なので、シンクの側面に押し付けながら右手の握力全開!!で、握りつぶす感じでやってみた。
これでも一応絞れる。何ヶ月も痛かった右手小指のへバーデン結節の痛みが最近治まってきたところでよかった!
これの痛みがピークの頃は、人と握手しても痛くて大変だったもの。

骨折のことを、子供たちと日本の家族にもメールで報告。
自分でもつくづくそう思うが、「利き手の右でなくてよかったね」とみんなに言われる。
できることを、少しずつゆっくりやっていこう。

★★骨折がわかってから、心に誓ったこと★★

 1.さらなる事故を防ぐため、周囲を状況確認しながらゆっくり落ち着いて行動する。
   (一番大事かも・・・)
 2.起こってしまったことは仕方がないので、イライラしたり落ち込んだりしない。
 3.人(特に夫)に八つ当たりせず、笑顔を絶やさない。
 4.できないことを嘆くのではなく、できるように工夫する。
   どうしてもできないことは、潔くあきらめる。
 5.初めから人(これも特に夫)に頼ろうとしない。
   時間がかかっても、なるべく自力でするよう努力する。
 6.人にしてもらったことについては、心から感謝する。

骨折なんて、なかなか経験できることではない。(もう2度と起こりませんように・・・)
別に命に関わる問題ではないので、一度できなくなってしまったことがまたできるようになっていく過程を、大いに楽しむことにしよう♪

骨折を機会により良い人間になれという、神のお告げなのかも?


3月2日(木) いよいよギプス装着!

圧迫感が半端じゃないので、昨日は夜寝る前にシーネを外してしまった。
あちこちが紫色に変色している。指が一番ひどくてゾンビのようだ。

外傷がなくても、骨折すると内出血するなんて知らなかった。
折れた骨が周辺の血管や組織を傷つけるからだそう。一晩解放したらだいぶ楽になる。
起きてすぐに、また自分でシーネを装着。

今日は整形外科で診察を受ける。
骨折翌日に行った Walk-in とは別の広々とした病棟で、みんなが「お城」 Castle と呼んでいるそう。


受付の方のとても温かい笑顔に、何だか救われる。
医療関係の方の笑顔は、まさに天使のようだ。

ナースを含め、この病院のスタッフは皆さんフレンドリーなのだが、整形外科のドクターはめずらしく無愛想な感じだった。
眉間に皺が寄った気難しそうなタイプで、ほとんどニコリともしない。
「ミネソタで新種発見!」 という感じ。

もう一度レントゲンを撮るように言われたので、お言葉に従う。
この前の女医さんには「一番大きな骨」としか知らされなかったが、Distal radius fracture との診断。
Radius って単語、「半径」という意味でしか知らなかった・・・

あとでネットで調べたら、
日本語では橈骨遠位端骨折 (とうこつえんいたんこっせつ) だそう。
「高齢者が転倒して反射的に手をついた時に一番多い骨折」だってさ!
ありゃりゃ・・・

確かにもう骨粗鬆症予備軍で、骨が弱くなっているのだろう。
カルシウムのサプリは一応摂っているけれど、そんなのは気休め程度なのかも。

橈骨とは、前腕の2本の長い骨のうち、親指側の骨。小指側のもう1本は尺骨(しゃっこつ)と呼ばれる。
(下の画像は、A. T. 長島治療院のサイトより)


この前は「きれいに折れているので、問題ないだろう」と言われたので安心していたが、今日のドクターはレントゲン写真をじっと睨んでいた。

骨折が関節に達しているかどうか、判断が難しいらしい。
将来、関節炎 arthritis を引き起こす恐れが全然なくもないとのこと。ええっ・・・!
(動揺していたので、細かいニュアンスはちょっと違ったかもしれない)
取りあえず今日はギプスを付け、来週外科のドクターの診察を受けるように言われた。

ギプス(英語では cast)は何色がいいですか?とドクターに聞かれてびっくり。
何色があるんですか?と逆に聞いてしまった。
ピンク、グリーン、オレンジ、パープル、ブルー、ブラックなどの他、迷彩色 camouflage color もあるそうで、さすがアメリカ!と感心。


ピンクやオレンジでは見る度に目がチカチカしそうだし、黒などダークな色では憂鬱な気分になりそうなので、ありふれたをお願いすることにした。

その服の袖は大丈夫ですか?とも聞かれる。
ギプスはシーネよりずっと分厚いのか聞いたら、これ(シーネ)が袖口を通ったのだから大丈夫ですね、と言ってくれた。

全然考えなかったけれど、ギプスを装着した日に、後で服が脱げなくなって苦労する人もいるのだろうな。袖を切るしかないのかしら。
これからギプスをつける方は、要注意ですぞ!

第一印象が無愛想だったドクターも、話してみれば別に意地が悪いというわけではなく、ビジネスライクなだけだったようだ。
彼が部屋を出て行くと、別のにこやかな女性が入って来てほっとする。

ギプスなんて生まれて初めて。どんな風に装着するのか見当もつかず興味津々♪
まず型を取ってそこに石膏を流し込むのかしら?なんて思う。(ギプスというと石膏でガチガチに固められてしまうイメージだったので)

でも、全然違った。
この前と同じように、親指部分を切った白い靴下みたいなものを腕にかぶせられた。
それから厚みのある白い綿のようなものをその上に巻き、へろへろした感じの樹脂製らしき包帯をさらに巻く。
それを、薄い手袋をつけて濡らした両手でおまじないのように少しずつなでなでしてもらうと、しっかり固まっていくのだった。


★おまじない中に、言われたこと色々★

 1.ギプスを濡らさないように注意すること。
   ほんの少しなら問題ないが、シャワー中にびしょ濡れになったりしたら連絡のこと。
 2.痺れたりひどく腫れた感じがする場合、腕全体を上げて様子を見る。
   20分経過しても痺れが取れない時は連絡のこと。
 3.ギプスの中を、決してかきむしらない。
   好きな音楽を聴く、おもしろいTV番組を観る、読書するなどで気を紛らわすこと。
   (こんなことを言われると、よけいに気になるよ・・・)

シーネ装着時は指半分位が隠れてほとんど動かせなかったが、今度は手相で言う感情線の少し上あたりまで覆われただけ。
指の可動範囲が広がり、今までより少し楽になる。

私の骨折のことを知り、近くに住む親戚がラム肉入りの野菜スープ、自家製パン、フルーツサラダ、クッキーを届けてくれる。ありがたい・・・
乳幼児二人を抱えて仕事もしているのに、本当にマメで優しい人だ。

オーケストラのコンサートマスターを含むファーストバイオリン仲間、団員の出欠についても担当しているライブラリアンに、骨折のため3月末と4月初めのコンサートに出られない旨を報告。
4月末の「メサイア」にはぜひ出たいが、どうなることやら。




3月3日(金) シャワーと食器洗いには、レジ袋とランチベルト

こんなにひな祭りらしくないひな祭りは、人生初めてかも。
昨日食事を届けてくれた親戚を含め、その他のリトルガールズたちを、去年に続き招待する予定だったが、料理が満足にできないので残念ながら今年はキャンセル。

それでも指先が前より自由になり、左手はだいぶ使えるようになってきている。
今日は掃除機もかけた。力が入らないので、部品を交換するのが結構大変だった。
手が使えなきゃ足がある!と気付き、めでたく成功。

食器洗いも、時間をかければ何とかなる。
アメリカではほとんどの家で食洗器 dish washer が活躍しているが、実は我が家のは2年半前に壊れたまま。
修理してもらおうとしたが、もう部品がないとのこと。
日本に住んでいた時はいつも手洗いだったので、まあいいか・・・とそのままにしてある。

食器洗いの時にも、シャワーを浴びる時にも、相変わらずレジ袋や大き目のポリ袋を使っている。
レジ袋がたまりすぎていたので、どんどん消費できてちょうどよい。

本格的ギプスにしてからは、大きな輪ゴムではなくランチベルトでとめることにした。
(シャワーの時は、肘に近い位置でとめる)


高校まで毎日お弁当を持たせていた息子のランチベルト、度々の引越しの断捨離で抹殺されることなく、なぜか生き残っていた。
まさかこんなことに役立つとは・・・!予知能力があったのだろうか。

PCのキーボードも、一昨日までは右手だけでやるしかなかったが、左手の指も少し使えるようになる。
デンタルフロスも、一番奥の歯以外は何とか使えるようになった。

着られる服が限られているため、何だか寒い・・・
基本的に、袖口がボタンどめになっていて余裕があるコットンシャツだけ。
フリースもセーターも、しばらく無理そうだ。
今日は特に寒く感じて、そのせいか鼻水がたくさん出た。でも鼻は片手でしかかめない。

オーケストラのヴァイオリン仲間やライブラリアンから、お見舞いと励ましメール。
特にオーボエ奏者でもあるライブラリアンからの返信が嬉しかった。
彼女も1年ほど前にやはり転倒で手首骨折の経験があるので、時間はかかるけど必ずよくなる、ギプスがはずれたらリハビリをきちんとすれば大丈夫!と教えてくれ、とても励みになった。


3月4日(土) Zumba

お菓子が焼きたくなり、市販のパイ皮を使ってピーカンパイを全部自力で焼いた。
こうして小さな成功体験を積み重ねることが嬉しい。

骨折後の内出血のためゾンビっぽい色に変色していた指も、段々と人間らしい色に戻ってきた。
夫が、ギプスにトランプ大統領の似顔絵を描いちゃうぞ! とふざける。
それだけは、どうぞご勘弁を~ (´Д`;)

夕食は、夫が買ってきたピザ屋さんのピザ
簡単でいいけれど、自分で手をかけた料理が懐かしくなってきた。

時々、左手の指の間に水が伝わっているような変な感触。
触ってみてもちっとも濡れてはいないのだけれど、ここ数日そんな不思議な現象が起こっている。

毎晩のヨガの前に、YouTube に合わせてのズンバ Zumba も再開♪
たくさんのレパートリーがあり、日替わりで楽しんでいる。


もちろん左腕をかばいながらソロリソロリと、1曲ほんの3~4分だけれど、体を動かすのは本当に気持ちいい。
皆さんのしなやかな両手の動きが、ちょっとうらやましくなる。